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相談事例①「民事信託のマズイ使い方例」

ご相談者からの相談内容を伺っていると、別の専門家アドバイスがマズイ内容というケースが多々存在します。


本当によくある出来事ですが、特定分野の専門家が自己取扱い業務を勧めたいがために、相談者の本当の課題がナイガシロにされているというものです。


ある意味、これは仕方のないことかもしれません。


特定分野の専門家は、1つの専門分野だけを取り扱っているため、他の専門分野のことは知らないですし、関わらないからです。


今回は、そういった縦割りの構造が招くマズイアドバイス事例の一つをご紹介します。

民事信託そのものの詳細解説は今回割愛させていただきますが、最近、不動産所有者の認知症対策や連続型承継対策などで活用アドバイスされる場面が多くなってきたと思います。


先般ご相談いただいた方も、少し前に、とあるワンストップサービスを謳う相談会にて専門家からアドバイスされたとのことでした。


その方(80代男性)は、地方でアパートを3物件(事業的規模)所有しているオーナーで、自宅で次男家族と同居しています。(奥様は10年前に他界)


次男はサラリーマンですが、アパートの管理などをけなげに手伝ってくれているそうです。


ご子息は2人ですが、長男家族は遠方で暮らし、実家には全く寄り付かない状態とのことです。


ご本人としては、そんな長男には自分の財産を渡したくない、次男と内孫(次男の子)に全て渡したいと考えていたようです。


という内容をその相談会で相談したところ、対応してくれていた司法書士が「それは民事信託を使って対策すれば希望を叶えることができます!」とアドバイスしたそうです。


更に付け加え、「アパート経営の認知症対策にもなりますので、一挙両得です!早くやるべきです!」と説得されたようです。


その相談者の男性は、「そんな必殺技みたいなことができるのか!?」と驚きつつも、なにか売り込まれているように感じ、その時は依頼せずに帰ってこられたそうです。


その後、私の講座を受講いただき、ご相談いただいたといういきさつがありました。


私のアドバイスは、「現状把握も正確に出来ていないのに、民事信託が最適解とは限りません!」です。


不動産については、「土地神話」時代とは大きく異なり、財産と言えるのか、はたまた負担なのかの判定を、まず最初にしなければいけないご時世となっています。


特にアパートなどの収益物件は、入居ニーズや修繕状況、最終的な出口戦略など考慮すべきことが盛りだくさんです。


また、そういったことを背景としながら、受け継ぐ人(子世代や孫世代)の本音の確認も大切です。


そのため、対策を検討するためには関係する全てについての現状把握をしっかり行わなければなりません。


そうでないと選択を間違えがちなのです。


間違っても表面的な相談者の希望だけで答えを出してはいけないのです。


その相談者の最終的な判断をご紹介します。


まず、要因の1つ目ですが、郊外でアパートの立地や諸条件があまり良くなく、今後の経営に課題が多かったこと。

(賃料低下率が激しい。大規模修繕などを怠りがち。物件のニーズ設定が時代に合っていない等)


2つ目の要因として、ご本人は次男とその子へ大切な財産(不動産)を守っていってほしいと考えていましたが、次男たちの本音を確認したところ「正直言って自分たちに負担(余分な不動産)を遺してほしくない」でした。

(今はこう言った考え方の若い世代が増えてきたと感じています。)


ご本人から見て長男は「実家に寄り付こうともしない!」でしたが、長男の本音を確認したところ、全く寄り付きたくなかったわけでなく、遠方かつ仕事等に忙殺され実家に寄れていないことを気にしておられました。


そういったことを踏まえ、選択肢毎のメリット・デメリット・リスクを認識いただいた結果、ご自宅以外の不動産のうち、事業性に課題のあるアパート等をご本人がお元気なうちに手放すことになりました。


また、長男・次男にとってのメリット・デメリット・リスクをそれぞれ認識いただいた上で、将来の相続に備えた分割方法を決め、決まった内容を公正証書遺言にて証拠書類とし、家族全員で情報共有いただきました。


長男は、これからは出来る限り実家に顔を出すと言っておられました。


今回のことで、ご家族皆さんが家族のコミュニケーションの大切さも認識されたようです。


私としても、間違った選択とならずに本当に良かったと実感しています。


といったように、今回の相談者のケースでは、たまたま後悔を生まない最善の選択をしていただくことができましたが、現状把握もろくにせず、間違った選択をされていることが多いのが現状の日本なのです。


皆さんは、「問題解決の要は正確な現状把握である」ことを認識いただき、後悔のない選択をしていただくようお願いいたします。

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